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私、世間体のために2人目を生まなければならない?
「子どもは2人欲しい」と漠然と考えていたある女性ですが、周囲からのプレッシャーや自身のキャリアの将来を考えるうちに気持ちが揺らぎ、やがて「本心」にたどり着きました。その心の軌跡とは…2人目を悩んでいる方にとってはずしっとくる内容かもしれません。
(※2024年6月5日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
「一人っ子、かわいそう」?周囲からのプレッシャーに揺れる私の選択
「一人っ子はかわいそう」と周囲からのプレッシャーを感じ、「もう一人子どもを持つ理由」を自問したとき、それが本当に自分の意思でないことに気付きました。
やはり、子どもは二人くらいが良いのではないかと考えていた滋賀県に住む笛吹和代さん(44歳)は、結婚前から漠然とそう思っていました。自分も両親と弟との4人家族で育ち、それが家庭の理想形だと信じて疑いませんでした。
和代さんは29歳の時、6歳年上の夫と結婚しましたが、なかなか妊娠には至らず、30代に入ると不妊治療を始めました。残業や業務時間外の電話が当たり前の職場で働いていたため、「次の繁忙期に迷惑をかける前に」と退職を選びました。
息子誕生後の葛藤と再び向き合う不妊治療への不安
2012年、33歳で息子が生まれました。祝福に包まれたのも束の間、親戚や周囲の言葉が心に引っかかるようになりました。
「一人っ子はかわいそうだから」「年齢的にも早く2人目を」といった言葉や、自分に聞こえるように息子に語りかける人もいました。「弟が良い? それとも妹?」
夫の仕事は忙しく、初めての育児はほぼ一人でこなしていました。第2子を持とうとすれば、また不妊治療に向き合わなければならず、多額の費用がかかり、体力的にも厳しい状況でした。
産後1年を過ぎた頃、臨床検査技師の資格を生かして健康診断の派遣スタッフとして働き始めました。保育園はいっぱいで、月に10日ほど実家に息子を預けて出勤していました。
退職を選んだのは自分ですが、どこかで「キャリアを手放してしまった」という思いがありました。「2人目を産んだら、またゼロに戻ってしまう。私はどれだけの間、外から切り離されてしまうのだろう」。そう思うと、怖くなりました。
夫の言葉に救われた日々と自分の本心への気付き
救いになったのは、夫の言葉でした。ある日、夕飯後の食卓で、夫はぽつりと言いました。「2人目は自然に任せよう」
「漫画の吹き出しのグチャグチャになった線のような気持ち」が完全にほどけたわけではありませんが、この頃からは一歩引いて考えるようになりました。
どうして私は、子どもが2人ほしいんだろう? 周囲がそう言っているから? 人口を減らさないためには2人以上産まないといけない? 出てくる答えには、どれも「自分」がいませんでした。
新たな道を切り開いた決意と家族の形
2015年、笛吹さんは妊活に悩む人を支援する事業「Woman Lifestage Support(ウーマンライフステージサポート)」を立ち上げました。事業に注力しようと認可保育園への入園を申し込みましたが、まさかの落選。認可外保育園の保育料は月に8万円かかり、自身の収入の大半をつぎ込む状況になりました。「もう1人」という気持ちは次第に冷めていきました。
「息子を真ん中に、夫と私が手をつないでいるイメージがパズルのようにぴったりはまったんです。もうどこにも入る余地はないよ、という感じで」
2016年の年の瀬、しまっていた段ボール箱を引っ張り出し、2人目の出産を考えてとっておいたマタニティーウェアなどを全部ゴミ袋に入れました。後悔はありませんでした。
自分の意思を見つけた日々と家族の新しい形
「子ども2人が当たり前という世の中の雰囲気にとらわれていたのかもしれません。そこに、私自身の強い思いなんてありませんでした」
妊活相談では「親戚から『次は男の子を産め』って言われて……」と悩みを打ち明けられることもあります。葛藤が見えるとき、あえて尋ねることもあります。
「本当にあなたが自分の意思で、次の子をほしいと思っていますか?」
よく晴れた今年の大型連休の後半、息子と夫と一緒に物置になっていた2階の部屋を片付けました。かつては2人の子どもが6畳ずつ使うと想像していた12畳の部屋です。
これからは息子が6畳、夫婦が物置として3畳ずつ使います。今の私には、これが一番しっくりくる形だと自信を持って思えます。
夫婦の出産意識調査:8割が感じる「2人目の壁」
国立社会保障・人口問題研究所による2021年の出生動向基本調査では、結婚の意思がある18~34歳の未婚女性が希望する子どもの数は平均1.79人で、初めて2人を下回りました。結婚持続期間15~19年の夫婦における「一人っ子」の割合は19.7%で、2015年の前回調査時から1.2ポイント上昇しました。
公益財団法人1more Baby応援団の「夫婦の出産意識調査2024」によると、2人目以降の出産をためらう「2人目の壁」を感じる割合は78.9%に上ります。理由としては「経済的な理由」が特に多く、「第一子の子育てで手いっぱいのとき」などが続いています。